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2007年釣行レポート一覧  注)以下は併設するブログ「毛鉤を巻いて川に行く(釣行編」に掲載していた記事です。 釣行レポート(9月29日)

2007年09月29日
色褪せて消えつつある渓・・(2007年渓流閉幕Ⅱ)

■岸田川上流域
■2007-9-29(土)
曇り・曇り・曇り
■天然区 イワナ ・・・・・5匹
 放流区 あまご&ヤマメ・・飽きない程度、イワナ・・少々
■同行者1名
サムネイル
←変わり行く渓(上流堰堤攻め)
今シーズン、前回釣行で締めたにも係らず、月末最終週末を迎えると「出来ればもう一回・・」と欲が出る。あわよくば『佐々里』と考えていたが、釣仲間のお誘いに西へと車を走らせた。しかし、何時も期待に満ち溢れる堰堤攻めも今年は貧果でパッとせず・・これまで一番信頼できた私のイワナ渓が消えつつあることを思い知らされた釣行となった。



Y「さて・・最後ですけど」
私「もう締めたし!・・」
Y「ぅえぇ~・・・んじゃ・・行って来よかなぁ~」
私「どこぉ?・・佐々里か?」
Y「行きそびれてるとこあるでしょ?・・・北や東とちごて・・」
私「岸田かぃ?・・」
Y「そうそう・・堰堤でイワナが待ってまっせぇ~・・去年尺に逃げられたんとちゃうん?・・今年は更にごっつなってお待ちかねかもしれまへんでぇ~・・どう?」
私「な・ん・じ・に・い・こ・?」
・・・てな具合で、一度は締めたにもかかわらずすっかり行く気になっている。『佐々里』もHPによると水温が下がりだし、最後のチャンスに訪れたい気もしたが、リンクさせて頂いてるブログのあちこちで良型のイワナが横たわる姿に触発されて、中国道を西へと走った。
往路は今にも雨が降り出しそうな雲行きで春来トンネルの手前で小雨が振り出した。
私「今日は雨の釣りやなぁ~・・」
Y「今日は???・・いつも殆ど雨ちゃう?・・」
私「確かに・・・」
小雨も止んで、本降りを迎える前の小休止?・・今にも押し潰されそうな曇天とは裏腹に、9号線をそれて川沿いを山頂目指してひた走る頃には、昨年逃したイワナへの想いが大きく膨らみ張り裂ける寸前・・・ひとりでに笑みがこみ上げていた。
養魚場に到着しておじさんに挨拶に行くも留守・・・夕方までには戻って来られるだろうと先に釣る事にした。
Y「上はお任せします。・・私ゃ下手でこの竿で・・」
私「・・先に下なん?」
Y「そうそう・・そりゃ去年逃したイワナに先に挨拶行ってもらわんと・・」
昨年まで7フィートのグラスロッドでボテンボテンを楽しんでいたYちゃんも今年は新調した8フィート9インチのシャキシャキロッドで長竿の釣りを楽しんでいる。
それでは行くか!・・・と気合を入れてリールを取り出した後・・
私「しもた!・・あのロッド忘れた・・積んでないやん!」
Y「ハリガネショート?・・」
私「そう・・・まあ、これでエエわ!」
この渓上流のご用達でもある超硬調の6フィート半を積み忘れ、この夏に足羽で活躍した6フィート半をセットした。(これしかないし!)
時刻はもう直ぐ10:30・・・・13:00頃には戻って昼飯としてYちゃんは下手へ、私は上手へと歩き出す。



渓の入り口で毛鉤を結び、本日の『イワナ溜まり堰堤攻め』を開始した。
・・・・で結果は?
往路で最高潮に膨らんだイワナへの想いは張り裂けることなく萎み始め、一昨年に脳裏を過ぎった嫌な予感が的中し始めたことに非常に淋しい想いを感じずには居られない・・・一昨年から堰堤を埋めた小石と砂利が払い出しで盛り上がり堰堤全体が砂で埋まりだしていた。
お目当ての堰堤は一匹出ただけで終わってしまい、途中の渓相もパッと見は悪くないが、通いなれた者だけが分かる変化に落胆も大きい。
簡単に言うと・・・イワナを落ち着かせる岩の穴やエグレが埋まって無くなっていた。



「去年この前を泳ぎ回った尺超えは何処行ったんや?」
堰堤を前に大きな溜息が胸の奥底から湧いて出た。
堰堤までの叩き上がりを含め数匹釣ったものの、何時もなら堰堤だけでこの程度は出ていたが、冷静に見渡すと左奥のエグレぐらいしかイワナを落ち着かせる場所が無い。
今にも降り出しそうな曇天が重く圧し掛かり、足取り重く渓を下る。
何時もなら長年染み付いた岩筋を足が覚えていて、何の苦も無く戻れるが、今回はルートを確認しながら降りなければならない・・それだけ渓相が変わっていた。
Y「初めて見る瀬があんねんけど・・」
私「上もサッパリ埋まって岩が動いとるわ!・・こりゃアカンで・・」
それぞれに渓の変化を口に出しながら昼食をとる・・・コンロを片付けて立ち上がり、6フィート半のロッドを仕舞って8フィート3インチの#2を引っ張り出すと足元にホイットレーのフライボックスが転がり落ちた。
(ワシら今年は非番かぃ?・・・開幕の佐々里の後は車で留守番ばっかしやんけ!)・・・と微かな反旗を掲げる様な転がり方だった。
「最後ぐらい使たろかぁ・・・」・・・とロッドを8フィート6インチの#5にした。
「久しぶりやなぁ・・ちょっとこの渓やったらオーバーパワーやけど・・まあエエわ・・」

午後からは下手に下がって放流落ちを拾いながら釣り上がる事にした。
放流場所の養魚場前から約300メートル程下がって釣りあがる・・・しかし、これまで見慣れた淵や瀬・・身を隠した岩・・人知れず心に秘めたエグレや穴がことごとく変わり果て、見慣れた風景ながらも新しい渓へと変貌を遂げており、驚きを隠せずには居られない。
ウェットで釣るつもりで#5ロッドを持ち出したものの、余りの驚きに初心に帰り、結局リーダーは10フィート前後でライトケイヒル#14のドライフライで釣り上がっていた。
一昨年から埋まり始めた淵・・・昨年は辛うじて淵であったが、今年は深瀬になっている。
何時もなら右のエグレから必ずイワナが浮いて出たが、今年はフライを投じて待つ所は砂の川岸となって水が無く、体に染み付いた立位置が瀬尻となっている。
何時もの立位置に毛鉤を投じると、見事にあまごが飛んで出た。



それから釣り上がるも、淵が瀬となり・・大岩が動いて落ち込みが生まれ、ポケットが連続したポイントは岩が押し下げられて見慣れない淵が出現している。いつもならイワナが随所から浮くが・・・出るのはあまごとヤマメばかりで、これまでの淵や落ち込み、ポケットのイワナ釣りとは異なり、埋まって増えた瀬のあまご(ヤマメ)釣りとなっていた。



「とうとう・・暴れだしたな・・この渓・・・水が出る度にイワナの穴が変わるんやろ・・」
ここは放流釣場とは言え、川の仕切りなどはまったく無く、天然河川の養魚場前の深瀬や小淵に魚を撒くだけである。そこで竿を出さない限り、釣り上がるにはウェイダーが必要不可欠で俗に言う濃密放流区となんら変わりはない。
やがて放流ポイントの下手の中洲が見えてきた。



上流へ向かって右は皆が釣り上がる為、魚は多いが型が小さい・・左は細い流れで数は出ないが、途中で枝沢が流れ込んでいて、時として驚く程の良型が出る。
私のお気に入りは左・・しかし、枝谷の合流点から上は完全に水枯れして秘蔵の穴は獣の糞だらけ・・大きな溜息が突いて出た。
程なく闇が押し迫り今年の竿納めとなり渓から上がる。
あまごとヤマメはそれなりに釣れたが、イワナが減った。



この二十数年・・ずっとこの渓を見てきた。
養魚場を営む先代が「上に堰堤が出来てからここんとこ水が出ん様になって落ち着いたぁ~・・岩が動かんよぉ~になったがぁ・・」・・と話をされていたことを思い出す。
おそらく、私がこの渓に通い出す少し前に、あの堰堤が出来たのではなかろうか?
確かに、真新しい堰堤で右岸には工事をする為に設けた地道があり、最初は軽の4WDで堰堤の上まで上がれた。
やがてその道に雨水が流れ轍が崩れ始めた頃、堰堤でイワナが拾え出した。
そして道は草木に覆われて、もはや誰も道とは思わなくなり、堰堤までは渓沿いに上らなければならなくなった。
しかし、ここは放流釣場の区間内で割高の日券を購入しなければならず、放流は皆無であることも幸いして釣り人も少なく、在来の天然イワナが随所に溜まり出した。
いつしか我々の仲間内では「イワナ溜まりの堰堤」と呼ばれる様になり、毎年誰かが尺物を射止める美味しいポイントとなった。
そしてこの二十年程、時として不漁に遭遇することもあったが、かなりの確率でイワナの大釣が堪能できた渓だった。
この間、この下手にある放流区間はずっと同じ渓相を維持してくれた。
午後に釣り上がった区間などは、それこそ立位置の目印となる岩はもとより、イワナの潜む穴やエグレ・・水の裂け目もはっきりと脳裏に焼きついていた。
部分的に崩れた所はあったにせよ『立位置』『毛鉤の落としどころ』『魚の出どころ』・・この二十年程は殆ど変わらなかった。
しかし、一昨年から変化の胎動を感じ始め、今年は確実に渓が動き出したことを思い知らされた。
先代が心底喜んだ『堰堤』はとうとう役目を果たさなくなってしまったと言える。
帰り支度をしているとおじさんがやって来た。
翁「ひさしぶりだがぁ~・・釣れたかぁ?」
私「岩が動いて埋まってきてるやん・・」
翁「オトドシあたりから水が出たらどぉ~にもならんが・・あの堰堤・・埋まったろぅ?」
私「あれ・・掘らへんの?」
翁「銭がなぃ~ちゅ~てなぁ・・・相手にせんわ・・」
私「掘らなぁ~・・アカンやろぉ~・・土石がドッと流れるんちゃうん?・・」
翁「あんたも知っとろぉ~がワシがココを継ぐ前からあの堰堤があったけぇ~なぁ・・こないだまでは暴れん渓じゃったが、去年も今年も水が出る度に変わりょるが・・もう、イワナは撒けんがぁ~・・ヤマメが増えとろぉ~?・・」
私「確かに増えたわ・・いつもなら残らんのに・・」
翁「イワナは撒いても直ぐには釣れん魚じゃけぇ~なぁ・・こんなけ水が出て砂がでりゃぁ~・・イワナが居つかんけぇ~・・釣れん!ちゅ~てなぁ~・・餌止めしたヤマメかあまごを撒かんとお客さんが喜んでくれんでぇ~・・・イワナは上も出んかぁ?」
私「アカン・・減った!・・サッパリでは無いけど・・・あの堰堤が戻らんと・・」
翁「銭がなぁ~ちゅ~て・・困ったもんだがぁ~」
代金を払い「また来ます」と車に乗り込む・・・・
これからこの渓は水が出る度に砂や小石が流れ、時として岩が動き・・私の体に染み付いた渓は色褪せて消えて行くのか?


今日堰堤で釣ったこの魚が・・・最後にならないことを祈り・・・
今回は正真正銘・・・・2007年渓流閉幕!


道具:天然区 6フィート6インチ(DT-3-F)
    放流区 8フィート6インチ(DT-5-F)
毛鉤:DRY/(天然区)アントパラシュート・ゴダードカディス#14主体
     /(放流区)ライトケイヒル#14・クイルボディーパラシュート#14
    WET(持ち出すも即刻撤収)

posted by bacoon at 23:31| Comment(3) | TrackBack(0) | 但馬に行く |

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