この毛鉤は巷でどの様に評価されているのか?はたまたメージャーなのか、マイナーなのか?・・その辺りも解っていない。
私がこの毛鉤を使用する様になったのは、ズバリ・・『ドラゴン・レディー』と言う殺気漂うネーミングが関係している。
私の父方の祖母は亡くなって久しいが辰年11月生まれであった。そして、何故だか私の家内は巳年3月生まれ、長女は辰年12月生まれである。
この3人・・所謂、「丸辰(まるたつ)」と言っても過言ではない「龍女」どもである。
つまり普段はおとなしい長物族であるが、一度怒らせて鎌首持ち上げると一筋縄では行かず、ひどい時には口から炎を吹かれて真っ黒焦げにされてしまい、子年生まれの私には到底太刀打ちできる相手ではない。
ある時、パターンブックをパラパラ捲っていると今一つパッとしない容姿の写真が目に留まり、たまたま名前を見ると「ドラゴン・レディー」と書かれてあった。
見ると同時に呼吸が止まり、無視してページを捲ろうとしても・・(巻ない気?・・ドラゴン・レディーよ!・・無視する気?)・・と何処からともなく声が聞こえる様な気がして、手も止まってしまった。
「わかりました(汗)・・巻かせて頂きます。」・・・とあっさり服従して巻いてみたのが最初である。
しかし、この容姿を有する毛鉤を一体どの様に扱えば良いのか?が、サッパリ解らずフライボックスの脇に大きく陣取る女帝の様な存在で数年を過ごした。
ある夏のイワナ釣り・・この日はドライでもなかなか魚が浮かず、ウェットはそれ以上にサッパリで非常に難しい日だったと記憶する。
半ば諦めムードで休憩した後、この毛鉤が一体どう言う感じで水と交わるのかが知りたくなり、何の気なしに無造作に結んで投じて見た。当然、浮かない・・が、水面を切ると沈めにくい毛鉤であった。
「どないせぇ~・・ちゅぅ~ねん!」・・とロッドを立てて[スゥ~]っと棒引きした途端、底から2匹のイワナが一瞬で浮上し、先取争奪戦の後、一匹のイワナが足元に運ばれた。
その後、この日はこの毛鉤で水面直下の棒引きトレースで立て続けに数匹ゲットできた。
まあ、その後はこの釣り方でサッパリの時もあるが、未だ理解に苦しむ何かの条件に合致すれば、簡単にイワナを浮上させる「女帝・龍淑女」であることには違いない。
イワナの浮きが今一つパッとしない日・・天空駆け巡る「龍」の如く、この毛鉤を水面直下で滑らせる様に引くと・・もしかすれば、それまでが嘘の様にイワナが浮上し出すかも知れない。別の見方をすると、ルアーを扱う様な気分に似通ってるとも思える。
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