ショートロッドの模索を始めてから気に掛けだしたグラスロッドをあれこれと店先で手にして試し振りをしては見たが・・・
余りの柔らかさにドン引きする私を押し返す様に、世間の論評が食わず嫌いをたしなめるのが毎度のことだった。
とにかくロッドを振るとグリップの付根からひん曲って行き、ポーズを決めた瞬間にグリップの中までひん曲りの余波を感じて、私としては調子云々以前にこの違和感が我慢できなかった。
 「柔ぃのはエエけど、せめてグリップぐらいシャキッとしとかんかぃ！」・・・と言う思いが拭いきれずに世間の論評との押し問答が絶えなかった。
これは何もグラスロッドに限らずカーボンでも最初に手にした軟調竿は同じ様な印象が拭いきれなかった記憶がある。これも鉄芯が入った様なバリバリのファーストアクションを好む私の性格が災いしていたのかもしれない。
それでもショートロッドに関する世間の論評はあたかもグラスが秀でている様な言い回しで、カーボンに拘ることがショートロッドに求める許容範囲を狭い殻に閉じ込めてしまうと感じ取れたのも事実である。
やがてその論評が単なる風評の如く聞き流す様な気分になりだした頃、意外なところでCoatacさんの雑誌の広告（だったか記事だったか？）が目に留まった。
「何？スウェルパッドのグラスロッド？・・ホンマかぃや？・・これやったらグリップの違和感（中までひん曲りの余波）無いんとちゃぅか？」・・と言う閃きは瞬間的に衝動買いの導火線に火を放ち、発火と同時に転がり込んだのがこのロッドである。
ところが、結果は同じ様なもので・・・求めるものには程遠く、即刻御蔵入りが確定して眠り続けるロッドとなって数年以上も放置された。
その後サイトを立ち上げ、先般このタックルインプレのコーナーを開設する際にも・・・「使わんし！・・Coatacさんの悪口は書きとぉ～ないしな！」と言う思いでリストから外されたロッドでもある。
ところが先日の釣行でロッドケースが似通ったCapsさんのロッドと間違えてコイツを積み込んでしまった。
「なんじゃ？間違ぉ～たやんけ！・・？？（そやけど）いっぺん（一回）試しに振ったろかぁ？（笑）・・どぉ～せココは釣れへんし！」・・と、渓に持ち出して振った途端に込上げる笑いと何とも言えぬ感覚に今までに無い一味を感じた。
このロッドは６フィート３インチと手持ちのロッドの中では２番目に短い・・当然ショートロッドとして購入したので当り前だが、この「当り前」に付帯されるショートロッドへの要求に対して的外れのレスポンスを返してきたが為にお蔵入りとなっていたのが現状である。
ところがこのショートロッドへの要求を抜きにして振ると、なかなか妙味が在って使ってみたい気になった。つまり、これまで致命傷と考えていた部分が妙味の素で、食わず嫌いの味知らずだったのかもしれない。
このショートロッドとしての致命傷とは、全体に鈍い胴調子で《どんよりまったり》のワイドループとなるところである。
私のロッドのは硬敏調子好みが軟敏調子を許容するに留まって居たが、軟鈍調子だけは苦手で避けていたかもしれない・・・無論、８フィート全長で軟鈍調子で踊られたら扱う側としてはタマッたものではないが、そこは６フィート強のスウェルパッドであり《のらりくらり》と踊られても何とか扱え、そこが妙味に感じる歳になったのかもしれない。
従って、７フィート半から８フィート程度が似合う小渓流で・・「毛鉤放り込みゃ誰でも釣れる！」・・と言う様な濃密放流特別区となれば、目くじら立てて釣るのも良いが、この竿の妙味を楽しむのも悪くないだろう・・・これも５０（歳）を越えた現状がもたらした趣なのかもしれない。
但し、釣果に拘れば出動は有り得ないと思う・・・やはり釣果を求める鋭器ではなく、妙味を楽しむ鈍器であることは間違いない。 |
＜＜フライロッド＞＞ 
