ついに竿を出す時が来ました。毛鉤を結んでロッドを振り始めます。ところが思う様には操れません。これも一つの難関と受け止められるかもしれません。
そして巷の教本などに頼ることになりますが、ロッドを振る前から・・・
「教本に溢れかえるキャスティング理論で武装し過ぎると、
殆どの場合・・訳がわからなくなってしまう」 ・・・と察します。
確かに最初で狂うとその後の矯正が大変・・と言うご意見に反論はしません。但し、「その後の矯正」など、この釣りをやると決めた方に負荷される事柄です。
まずはフライで一匹釣りたい方に申し上げるのも酷な話に思えます。
また、ビデオやDVDによるキャスティングの解説は「書き物」とは比較にならないぐらい役に立つとは考えます。
しかし、私が散見した範囲では初めての方ではなく、始めた後の更なるステップアップに多くの内容が充てられている様な気がして、初めてロッドを持たれた方は敷居が高く感じられる様な気がします。
昨今、ネットで巷のサイトを拝見するとキャリアを積まれたフライフィッシャーがちょっとしたキャスティングのアドバイスをされております。
色々な事を書かれておりますが、概して示すと「タイミングの計り方とループづくり」におけるその方なりのエッセンスが記されているとお見受けします。
私としては教本に出てくる時計の文字盤や手首の使い方をあれこれ解説したものよりずっと解り易いと考えます。
ではその辺り・・私なりに示すと以下となります。理屈は巷であれこれ講釈されている為、感覚的(気持ちや気分)な部分で示しております。
お断りしておきますが、私は特にこのキャスティングが最も苦手ですのでとりあえず釣りができるまでの参考としてください。
<D・渓流釣り(ノベ竿釣り)の経験者の場合>
↑構えず気負わず普通に振れば、直ぐに釣りができると思われます。
ヘラ師の様に竿を回転させて振り込むことに慣れておられる場合は・・・
「基本的にロッドの横回転は禁物」
・・・と頭に入れておけば、後は竿が短くなった程度でタイミングを計ればそれなりにクリアできると考えます。
実際、フライロッドを手にして簡単にキャストしてしまうのはこのDに該当される方々だと思ってます。おそらく竿を振る時の感覚的な部分が下記Eと比べて似通っているのか?・・とも察します。
<E・ルアーフィッシング(リール釣り)転向組の場合>
↑最も不利な経験をされていたと考えて下さい。
特にルアーを経験された方はフライに最も近い釣りであるとお考えかもしれませんが、キャスティングに関してはDやFの方よりも逆行する様に不利な感覚が無意識のうちに刷り込まれていると考えるのが無難です。
投げ釣りもキャスト、ルアーもキャスト、フライもキャストと言いますが、同じキャストでもフライの場合は他のふたつと全く異なります。
キャスト=放つ・・と言う表現は放たれる「仕掛け」や「ルアー」や「毛鉤」に対して言えることで、竿を「振る」事には該当しません。
この「振る」行為はバットを振る「=スイング」に近い場合と、全くそうではない場合があると思います。
極論すればこれまでの釣りで竿を振るのはスイングに該当するかもしれませんが、入門書にある様なキャスティングでフライロッドを・・・
「スイングさせる感覚で振るとラインは全くコントロールできない」
・・・と考えるのが無難です。
もし、ゴルフを嗜まれる方なら、投げ釣り=ドライバーショット、ルアー=アイアンショットと言う感覚で、フライ=ロングパットと考えて下さい。
所詮、この程度しか飛びません。しかし、同じクラブを振るにしてもショットとパットでは同じものとはお考えにならないハズです。気持の上ではショットとパットの差に似ております。つまり、これまでの釣りで讃えられた・・・・
「遠心力と瞬発力はフライをキャストする場合の天敵」
・・・と考えるのが無難です。
こう言うとショートレンジを得意とするルアーマンの方は若干安心されるかもしれませんが、フリップキャストやスナップキャストが得意であられるなら、フライロッドを持って整形外科に出向き、ロッドを握ったままで手首にギブスをはめてもらってください(笑)。
「最も得意とされた手首の動きを殺さないと上手く飛ばない」
・・・様な気がします。
どうしても得意とする手首を活かしてキャストされたいのであれば、投擲点を見据えて首も目玉を動かさずに得られた視界からリールが消えない範囲でロッドをお振りになってください。
視界からリールが消えた次の瞬間に殆どコントロール不能になっていると察します。
この場合、ロッドの全長は1フィート程度短くなっていると考えて置くのが無難です。
結局思った様にキャスト出来ないのは、これまでに入手した情報による理論が不足している訳でも、ご自分の技量でもなく・・この様に「キャスト」と言う言葉のイメージに潜在する感覚的なファクターが支配的である様な気がします。
<F・釣り未経験者の場合>
↑竿を振るのが初めてであれば、天性がそのまま表れてくると考えます。
「こんなもんでええんか?」とお考えであれば水面をバシャバシャ引っ叩くことなく、8~10mも飛んでいれば「そんなもんでエエんです。」となります。
「概ねキャスティング初心者には以下に示す 3匹の『妖怪』 が取り付きます。」
そのうち飽きて居なくなりますので気にする必要はありません。
気にし過ぎて小理屈練り回すのも結構ですが、「妖怪の仕業」として・・・
「構えず気負わず、おおらかな気持ちで取り組むのも一つの方法」
・・と思います。
『妖怪(ラインまとい)』
こいつが取り付くとラインが体にまとわりついて始末におえません。
「投げよう!」と意識し過ぎず、力の挿抜を踏まえてロッドを振ることです。
この様に踏まえてロッドを振れば、少々タイミングが不味くても、この妖怪は取り付けなくなります。
ブランコを思い出して下さい。ブランコの揺れをロッドの振りとしてイメージします。
ブランコを漕ぐ時に四六時中力を入れて漕ぐのではなく、力を入れ込む時と抜く時のタイミングがあると考えます。
ロッドの振りにおける力の挿抜もこのタイミングに殆ど等しいとイメージ下さい。
ブランコは前に揺れる時に漕ぎ、後ろ方向は惰性で戻ることが殆どでしょうが、ロッドを振る場合はバックキャストでも同じ様なタイミングで力を入れ込めば何とかなります。
実際、後ろ向きにブランコを漕ぐのが難しいのと同じく、バックキャストは難しいものです。
『妖怪(毛鉤盗み)』
勇んでロッドを振り始めると背後でパチパチと健闘を称える拍手が聞こえます。この妖怪の仕業です。
自分では中々うまくラインを操っている様に感じますが、実は錯覚でシュートする頃にはこの妖怪に結んだハズの毛鉤が盗まれてます。
いきり立って、必死漕いで前に飛ばそう飛ばそうとしないことです。
拍手は概ね背後で鳴る様にこの妖怪は背後に取り付きます。「後ろの木技や草に引っ掛かっても已む無し」と言う・・・
後ろにもラインを伸ばす気持ちでロッドを振る様にすれば、そのうち飽きて居なくなります。
『妖怪(空糸結び)』
ふと気が付くと、リーダーやティペットに幾つも結び目が出来上がっている場合があると思います。この妖怪の仕業です。コイツも最初の頃は面白がって取り付きますが、そのうち飽きて居なくなります。とにかく・・・
ロッドを・・めたらやったら振りまわさないことです。
また、上記3匹の妖怪は全て歓迎できるものではないですが、後一匹、歓迎すべき妖怪が居ます。
『妖怪(ゴム紐引っ張り)』
ロッドを振っている最中に一瞬ロッドの先にゴム紐を結んで逆方向に軽く引っ張る様なチョッカイを掛けてくる奴が居ます。この妖怪の登場です。
コイツが取り付き出したらシメタものです。
この妖怪の仕業を感じ始めたら力任せにロッドを振らずに、そのチョッカイを楽しむ様にリズムとタイミングを重視してロッドを振ってください。毛鉤を飛ばすには・・・
「腕力ではなくロッドを振る安定したリズムとタイミングが非常に重要」
・・・であることに気付かれるハズです。
ココまで来ると、とりあえず釣りができる距離に届く様になっていると思われます。
とにかく、必要以上に理論武装するのではなく、まずはロッドを振って上記に示す妖怪連中との戯れを楽しまれることをお勧め致します。
これはこれで、気持ちの持ち様によってはそれなりに楽しいものです。
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